借地借家Q&A

賃貸人(地主・家主)が不動産を売ってしまった!どうすればいいでしょうか?
賃貸人(地主・家主)から土地を借りている借地人、戸建ての家やアパートの1室を借りている借家人は、借地権・借家権という借り手の権利を持っています。
借地契約や借家契約をした元の賃貸人(地主・家主)が、土地を売却したり(借地の場合)、建物を売却したり(借家)した場合でも、新しく土地や建物の所有者となった土地や建物の買い手に、引き続き借地契約や借家契約を主張できるでしょうか。
借地借家に関する法律では、借地人や借家人に次の条件があるのなら、引き続き借地契約や借家契約を主張できると決められています。
(1)借地契約の場合 借地人が借地の上に借地人名義で登記された建物を所有している場合(借地借家法10条)
(2)借家契約の場合 借家人が借家の引き渡しを受けている場合(借地借家法31条)
借地の上に自分の名義で登記した建物を持っている借地人は、土地を元の地主から買って新しく土地所有者になった買主にも、自分の借地権を主張して借地契約の継続をすることができます。
建物の引き渡しを受けている借家人は、建物を元の家主から買って新しく建物所有者になった買主に、自分の借家権を主張して借家契約の継続を主張することができます。
新地主や新家主は、土地や建物を買ったからといって、借地人や借家人の権利を否定できません。
新しい地主や家主から、地代や家賃の請求を受け、地代や家賃を新所有者に支払う際には、支払う前に、土地の登記や建物の登記を調べて(登記は法務局=登記所に行けば誰でも閲覧や謄写ができます)、土地や建物の所有権登記が新しく地代や家賃の請求をしてきた人や会社の名義になっているかを確かめましょう。
契約期間や契約条項・差し入れてある敷金は、旧所有者との期間や条項が有効で、敷金も引き継がれます。旧所有者との契約期間が将来満了したときは、契約の更新もできます。
賃貸人(地主・家主)が不動産を売ってしまったと分かったとしても、借地人・借家人の権利は主張できますので、過度のご心配は不要です。
借地の場合で、借地人が借地の上に自分の名義で登記した建物を持っていることが条件と申しました。
建物の登記名義が父の名義であり、父は死亡しているが、まだ遺産分割していなくて父名義の建物のままというケースもあるでしょう。相続の登記が未了でも、借地権の主張はできますので、ご心配はありません(借地権は、共同の法定相続人である例えば、妻や子の共有の借地権となります)。
借地契約者が夫なのに、建物の登記名義人は妻であるというように、借地契約者と建物登記名義人が違っている場合は、注意が必要です。現在の地主との借地契約については問題ありませんが、地主が土地を売ったり、競売にかかってしまったりして、新しい土地所有者になると、借地契約を対抗することができなくなります。今のうちに、専門家に相談して対処しておくことをおすすめします。
地主から土地を買ったという業者から、底地を買うか、借地権を売るか、次の更新の時に土地を明け渡すかを選べと言われました。どれか決めなければいけないのですか。
底地を買うか,借地権を売るか,次の更新の時に土地を明け渡すかのどれかを選ばなければいけないわけではありません。あなたが,現状のまま,土地を借りて住み続けたいと思えば,今までどおり住み続けることを選ぶこともできます。
あなたが土地を借りて住み続けたいと考えているのであれば,地主は,あなたに対し,底地を買うことも借地権を売ることも強制できません。また,あなたは,底地を買い取らなければならない義務も借地権を売らなければならない義務もありません。さらに,借地契約は20年や30年の期限が決まっていますが,法律(借地借家法)で借りている人の住み続ける権利を強く保護していますので,契約期間が満了したときに地主がもう更新をしないと言っても,法律上,土地を借りている人(借地人)は住み続けることができるのが原則です(法定更新)。
しかし,このような借地人の権利を無視して,底地を買うか,借地権を売るか,土地を明け渡すかを執拗に迫る悪質な業者も存在します。このような業者に地主が変わった場合には,当弁護団にご相談されることをお勧めします。
家主から、建物を建て替えるから(耐震補強工事をするから)、出ていけと言われました。出ていかなければならないのでしょうか?
必ずしも出ていかなければならないというものではありません。
家を借りている人(借家人)は家主よりも弱い立場にあることが多いため,法律(借地借家法)で,地主の都合により,借家人が住居を追い出されないよう保護がなされています。もちろん,借りている建物がとても古くなり,人が住めるような状態でなくなった場合には(この状態を朽廃といいます。),対象の家が用をなさなくなったということで契約は終了して,出ていかなければなりません。しかし,朽廃という状態にある家はそう多くはありませんので,まだ住める建物について,建替えるから出ていけとか,耐震補強工事をするから出ていけとか言われても,家主の言うとおり,家を明け渡す必要はない場合がほとんどです。そして,仮に出ていくとしても,それなりの立退料が支払われることが通常です。
しかし,このような借家人の権利を無視して,新しいマンションを建てるなどの目的で,強引に追い出しを迫る悪質な業者もいるようです。突然,家主から出ていけと言われた場合には,当弁護団にご相談されることをお勧めします。
賃貸人(地主・家主)から、更新料を払えと言われました!払わなければいけないのですか?払えないと出ていかなければならないのでしょうか?
更新の際に更新料を支払うということについて、これを認める法律上の根拠もなく、また、そのような慣習は判例で否定されていますので、更新の際に更新料が当然に発生するというようなことはありません。
したがって、賃貸人との更新料支払合意がない限り、更新料を支払う必要はないのです。そして、その合意は、具体的金額や、算定可能な方法で、支払うべき更新料を定めなければならないとされます。なお、更新料支払合意の有無は、基本的には賃貸借契約書上に更新料支払特約があるか否かを見ますが、口頭等でも合意は成立するので注意が必要です。
ここで、更新の際(期間満了の際)、新たに賃貸人と契約書を作成するなど条件を合意して更新することを合意更新といいます。
しかし、新たに合意しなくても、借地借家法により、借地の場合は、建物が存在して土地の使用を継続するときには、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなされます。借家の場合は、建物使用を継続するときには、従前の契約と同一の条件で(期間の定めはないものとして)更新したものとみなされます。このように、新たに合意しなくても、使用継続等により、法律上、契約は更新されるのです。これを、法定更新といいます。
他方で、賃貸人側が更新を拒絶すると言ってきても、賃貸人側・賃借人側の土地又は建物を使用する必要性等を考慮して、賃貸人側に正当事由がなければ、更新拒絶は認められません。そして、合意のない更新料を支払わないことをもって、更新拒絶に正当事由があるということにはなりません。
したがって、更新料支払いに関する合意がない場合には、新たにわざわざ更新料を支払って合意更新しなくても、使用継続等による法定更新ができますので、更新料を払わなくても出て行く必要はないのです。
なお、更新料支払いの合意がある場合にでも、更新料の金額や、更新料の合意をした経緯等によっては、直ちに更新料全額を支払えなくても、それだけで出て行かなければならない(更新拒絶が認められたり、賃貸借契約の解除が認められる)とも限りません。さらに、更新料の支払いに関し、何らかの合意がある場合、どのような言葉であれば具体的に算定可能な金額として有効となるか、また、法定更新の際にも有効となるか、といった点については、判例上、明確に定まっているわけではなく、裁判例が分かれているところです。ですので、更新料に関して何らかの合意があるような場合には、個別に相談していただくのがよいかと思います。
地主から更新料を払わないなら、今後建物の増改築は絶対に認めないと言われました。更新料を払わないと建て替えができなくなってしまうのでしょうか?
そんなことは全くありません。更新料の支払いと、増改築の可否は関係ありません。そもそも、増改築は、これを禁止する特約がなければ、借地人(建物所有者)が、自由に、地主の承諾なく(増改築承諾料の支払の必要なく。当然更新料の支払とはかかわりなく)できます。ただ、賃貸借契約書上、増改築に地主の承諾(承諾料の支払)を要することとされているケースが一般です。
ここで、増改築禁止特約がある場合、地主が任意に承諾してくれない(承諾料の合意がまとまらない)ときには、借地借家法により、裁判所に対し、地主に代わって増改築の許可を出してもらうことができます。この法的手続を利用すれば、建物の増改築ができるのです。もっとも、地主に対する承諾料等は必要となりますが、この承諾料の金額等も、裁判所が決めてくれます。承諾料の金額は、増改築の内容等により幅はありますが、おおむね、全面的改築の場合には更地価格の3%から5%前後、全面改築に至らない場合には更地価格の1%から3%前後とされることが多いです。いずれにしても、増改築承諾料の金額算定に、更新料の支払の有無は考慮されないとされます。
よって、更新料を支払わないと増改築を認めないと言われても、建物の建て替えは可能であり、増改築承諾料とは別個に、更新料を支払う必要は全くありません。
なお、改築とは、建物を建て替えることをいい、増築とは、改築以外で床面積を増加させる建築行為のことをいいますが、建物の柱・土台等主要構造部を取り替えるといった大修繕など、建物の耐用年数に大きく影響を及ぼすような工事は、禁止される増改築に含まれるとされます。これに当たらない普通の修繕は、増改築禁止特約の有無にかかわらず、もちろん自由にできますが、微妙な判断を要するときには裁判所に対して増改築許可申立をしたほうがいい場合もありますので、個別に相談していただくのがよいかと思います。
賃貸人(地主・家主)から、賃料を値上げする、値上げに応じないなら出ていけと言われました。値上げに応じなければ、出ていかなければならないのですか?
値上げに応じなくても出て行く必要はありません。賃借人が支払わなければならないのは賃貸借契約で決められた賃料額です。これは契約で決められたことなので、賃貸人(地主、家主)も守らなければなりません。契約当事者の一方が、相手方の承諾なく契約内容を変更することはできないのです。つまり、賃貸人(地主・家主)による賃料の値上げ要求は、賃借人に対する契約内容変更のお願いにすぎません。したがって賃借人が値上げに応じるか否かは自由です。
また、賃貸人(地主・家主)は、賃借人が賃料の値上げに応じないからといって賃貸借契約を解除し、賃借人を追い出すことはできませんので安心して下さい。
注意が必要なのは、賃貸人が値上げした賃料でなければ受け取らない場合です。これは受領拒否といいますが、賃借人は契約で決まった賃料を支払わなければ賃料不払いとなり、契約を解除されてしまいます。そこで賃貸人(地主・家主)が賃料を受け取らない場合は、借地(又は借家)がある地域の法務局に、契約で決められた賃料を供託することができます。供託すれば、賃借人は賃料不払いとなりませんので、契約を解除され追い出されることもありません。
賃借人が賃料の値上げに応じない場合、賃貸人は裁判所に賃料値上げ調停を申し立てることができます(借地借家法11条、32条)。調停は裁判官(調停官)と2人の調停委員からなる調停委員会のアドバイスを受けながら、賃貸人と賃借人が話し合う手続です。調停で値上げに応じるか否かも賃借人の自由です。調停で話し合いがまとまらなかった場合、賃貸人は訴訟を起こすことができます。訴訟では賃料額の鑑定が行われ、裁判所が適正な賃料額を決定します。

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